コラム

COLUMN

2018/12/04

みんなのお宝写真館(11)

芳賀さんが71年7月に撮影した、岩手・秋田両県を結ぶ花輪線のSL三重連。幸い劣化がそれほど進んでいなかったうちの1枚。

 
■SLの雄姿、デジタル化

2018年8月、スキャンセンターに、昔の蒸気機関車を写したネガフィルム約30本が届いた。しかし、その大半が丸くカールしていて、一部に溶けたような跡も広がっていた。

依頼主は、神奈川県大和市の芳賀和士さん(83)。1960年代から70年代にかけて、当時の国鉄奥羽線や花輪線、小海線、関西線、伯備線など、全国各地で撮影したものだ。

幼い頃からSLファンだったという芳賀さん。30歳を過ぎたころ、勤め先が週休2日制になり、土日を使って撮影旅行に出かけるようになった。お目当てのSLが来るまで、雪の中で3時間待ったこともある。

39歳で結婚して、撮影旅行に出る機会は減っても、独身時代に撮りためたネガはずっと保存してきた。

しかし、今年になって写真の整理を始めたところ、ネガの異変に気づいた。丸まっていたり、水が浮かんだようになってシートにくっついていたり。「しまった、と思いましたよ。まったく想定外でしたので」

これはビネガーシンドロームという現象で、フィルムを通気性の悪いところで長期保管していると発生のリスクが高まる。芳賀さんは「あまり使わない部屋の戸棚にしまっていた。風通しのことなど考えていなかった」と悔やむ。

デジタル化後の画像には、白く飛んだ部分があったり、ひび割れのような筋があったり。芳賀さんは「一部に影響が出たのは残念だが、放っておいたらもっと悪くなっていたはず。今デジタル化しておいて良かった」と話している。

ビネガーシンドロームに侵され、左・中央・右の3カ所に白く画像が飛んだような箇所が生じた写真。芳賀さんが70年7月、岡山・鳥取両県を結ぶ伯備線で撮影。

 

芳賀さんが保管していたネガフィルム。全体的に丸く反ったようにカールし、一部に液体のようなものがしみ出してきていた。

 

■密閉せず、乾燥した涼しい所に

ビネガーシンドロームは、フィルムを長期保存する際に最も気をつけなければならない現象だ。フィルム素材のセルロースアセテートが、高温多湿の環境下で加水分解し、酢酸を発生。その過程でフィルムは丸まったり波打ったりして縮み、溶融や癒着を起こす。進行すると元に戻せない。酢酸臭が感じられたら、危険信号だ。

写真整理アドバイザーの資格試験を運営する一般社団法人写真整理協会理事の浅川純子(すみこ)さん(52)は「フィルムは湿気や高温に弱い。乾燥した涼しいところに保管し、密閉せず定期的に外気に触れさせる必要がある」として、「大切なフィルムはデジタル化しておくと安心。酸っぱい臭いがしてきたら急いで対応してほしい」と話している。

(2018年10月23日付朝日新聞夕刊に掲載)

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