コラム

COLUMN

2020/09/30

写真家・浅田政志さんの人生を変えた「家族写真」とは(2)~当たり前の日常の価値~

「選挙」 写真集「浅田家」より/🄫浅田政志

 

転機となった東日本大震災

一般社団法人写真整理協会代表理事・浅川純子さんによる対談シリーズ!

映画「浅田家!」(10月2日公開)で、二宮和也さんが演じる主人公のモデルとなった、写真家・浅田政志さんを迎え、全5回のコラムでお届けする企画。第2回は、浅田さんの転機となった東日本大震災について、浅川さんがお話を伺っていきます。

 

浅田)もともとは写真家として、「こうすればこんな風になる」って考えながら工夫して撮るのが、写真の面白さだって思っていたんです。

ところが2011年、東日本大震災が起きました。スポーツ選手や芸能人などができることを探して動きはじめている中、他のカメラマンやいろいろなアーティストたちと話す機会もあり、僕も写真で何か力になれないかと考えるようになりました。

浅川)とても大きい被害でしたよね。

浅田)そうですね。ただ、僕は写真家です。直後にわざわざ写真を撮りに行って、一体何ができるんだろうと思いました。泊るところもないし、もし行ったとしても、それこそ食料も自分の分を持っていかなきゃいけないし、そういうスキルも無いから邪魔になるだけだろうし。そもそも、悲しみに打ちひしがれる方々のもとに行って、そういう姿を撮ったとして、本当にその方の力になれるのかな?と…。

いろいろ考えると、今、写真を撮るっていうことで助けになれることはないなっていう結論になったんです。

支援物資のボランティアへ

浅川)それでも被災地へ行かれる前提で、いろいろ考えられていたんですよね。

浅田)結局、岩手県の野田村にボランティアに行きました。体育館に、全国から支援物資が寄せられていました。例えば「4歳の子の服が欲しい人」など、被災者にどういうものが必要かを挙げて、身長、性別、家族構成を元にして作られたリストがあり、それを元に物を探していくボランティアでした。

そして、帰りに終業の鐘が鳴り、今日の終わりの報告をしようとボランティアセンターに行ったときのことです。
外で写真を洗浄している人が、目に入りました。

小田君っていうんですが(編集部注:写真洗浄ボランティアの小田洋介さん。映画で菅田将暉さんが演じる「小野陽介」役のモデル)、気になってしまい横を素通りできず、話しかけていろいろ聞いてみました。「写真を撮ることで力にはなれない」「写真は無力だ」と思っていたけれど、新たに撮らなくたって、そもそも元の写真、ひとりひとりのアルバムが既にあったんです。そういう写真を見ることによって、心の傷が癒されたり、ちょっと元気になったりすることが、確かにあるなと思いました。

写真家が撮る写真がいいとか、僕の撮った家族写真が特別面白いとか、全然そんなことではなくて、みなさんの撮っている何気ない写真そのものにやっぱり力があるんです。何て言うのかな、みなさん自身が持っている写真っていうのは、なかなか良さに気づかないというか、あまりにも何気なさ過ぎて、日常と地続きだから価値がわからないんです。

浅川)ほんとに、そう思います。

 

映画「浅田家!」より/🄫2020「浅田家!」製作委員会

「当たり前」の価値

浅田)東日本大震災は、明らかに目に見えて非日常です。そういう時になると、当たり前の日常の価値に、今がそうでなくなったからこそ、やっぱり目が行くんです。町も風景も変わりはてて、家も流されてしまった方には、その家で撮った写真が、切実に取り戻したい日常として迫ってくるんですよね。

それはやっぱり、写真家の撮るどの写真にもできない、みなさんが自分たちの家で撮った写真だからこそ実現できることです。東日本大震災は極限的な例ですが、当たり前のように過ごしている日常が変わる瞬間って、実はたくさんあると思います。

今年の2020コロナショックもその一つです。親が還暦のときや、親が亡くなったとき、結婚するときでもいいし、引っ越しするときでもいいです。引っ越しのために片付けをしていて、アルバムが出てきてめくって眺めていたら、自分の人生を振り返る時間が止まらなくなることもあると思います。

浅川)私のお客さまも、整理を頼まれて伺うと、やっぱりアルバム開いた瞬間に顔が変わるんですよね。それまでは困りごとだったのに、開いた途端にそれが、ものすごい宝だったってことに気付かれるようです。なので、浅田さんのお話を伺っていると、共感することばかりです。いま私は写真整理協会という組織を運営しているのですが、写真整理にかかわり始めたそもそもの理由を、少しお話させていただいてもよろしいでしょうか。

浅田)もちろん。ぜひお聞きしたいです。

浅川)3年前まで、私はパソコン教室で約20年にわたり講師をしていました。デジカメに関する授業では、撮影後にパソコンで作品を作るレッスンをしていたのですが、シニアの生徒さんから「先生、家にたくさんあるアルバム、そのままにもしておけないと思っているのよ。どうしたらいいのかしら?」といった声が寄せられました。

そんな中、ある写真整理講座を終えての帰り道、写真をテレビで見られる機器「おもいでばこ」のメーカー担当者さんが、こうつぶやかれたのです。「浅川さん、みなさん写真をどうしてるんですかね? そもそも写真って、見るために撮ったんじゃないんでしょうかね?」。

その言葉を聞いた時に、これまで耳にしてきた生徒さんたちの悩みごとが重なり、写真の大問題が目の前に突き付けられた気がしました。写真は、後で見るためにそのシーンを記録するものです。でも、アルバムもしまいっぱなし、デジカメやスマホでも撮りっぱなしで、ほとんど見返していないんですよね。写真本来の意味を成していないのです。そこに、「写真整理」という難問があることに気付いたのです。

写真整理とは、写真の「整理」自体が目的ではなくて、あくまでも「見る」ことを目的にしないといけないんです。そのことを一人でも多くの人に気付いていただくために、それ以降、写真整理アドバイザーという専門家を育てて、写真を見やすい形にする活動をしてきました。

私たちが考えている目的そのものが、『アルバムのチカラ』の中で浅田さんが撮影された写真によって、存分に表現されていました。私は、こういう人が世の中にいてくれたんだと、すごくうれしかったのです。

浅田)あぁ、そうだったんですか。うれしいですね(笑)。ところで、整理する時は、写真はお客様ご本人が選ばれるんですか?

浅川)はい、ご本人に選んでいただくのを基本にしています。

浅田)そうですよね。これがほんとに思い出深い写真なのかが、本人じゃないとわからないですもんね。

浅川)その通りです。写りがいい悪いで選ぶべきではないと思っています。私たちに選んで欲しいと頼まれた時は、一般的によい写りのものを選ぶのですが、その方にとって思い出深いものが他にあれば、替えていただく確認作業を入れるようにしています。

浅田)そういうことが、大事ですよね。

 

写真家・浅田政志さん

いかがでしたか、写真家・浅田政志さんに写真整理協会代表理事の浅川純子さんがインタビューしたコラムの2回目。
次回は、写真家・浅田政志さんの人生を変えた「家族写真」とは(3)~一生に一枚しか撮れないなら~と題し、写真家としての使命や、家族写真を撮るようになった理由について、浅川代表が深掘りしていきます。お楽しみに!

なお、映画「浅田家!」は、2020年10月2日から公開されます。
この映画公開を記念して、ニッポン写真遺産では、2020年10月末まで「映画『浅田家!』公開記念キャンペーン」を実施しています。

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